この記事では、映画「さがす」について、公式サイトからの情報を紹介した上で、私の感想を記載しています。新たに本映画を鑑賞する人が増えてほしいというのが本記事の目的であり、ネタバレは記載しておりません。
あらすじ
大阪の下町で平穏に暮らす原田智と中学生の娘・楓。
「お父ちゃんな、指名手配中の連続殺人犯見たんや。捕まえたら300万もらえるで」。
いつもの冗談だと思い、相手にしない楓。しかし、その翌朝、智は煙のように姿を消す。
ひとり残された楓は孤独と不安を押し殺し、父をさがし始めるが、警察でも「大人の失踪は結末が決まっている」と相手にもされない。それでも必死に手掛かりを求めていくと、日雇い現場に父の名前があることを知る。
「お父ちゃん!」だが、その声に振り向いたのはまったく知らない若い男だった。
失意に打ちひしがれる中、無造作に貼られた「連続殺人犯」の指名手配チラシを見る楓。そこには日雇い現場で振り向いた若い男の顔写真があった――。
引用元:映画『さがす』公式サイト
予告編
ネタバレなし感想
きっかけは実写版「ブラックエンジェルズ」
いきなり本題と関係ない話ですみません。
漫画「ブラックエンジェルズ」かつて少年ジャンプを愛読していたアラフィフ世代おじさんなら当然知ってますよね?
そう、あれですよ。自転車のスポークです。「地獄へ落ちろ!!」ですよ。
能力バトルものの先駆けであり、敵も味方も容赦なく死んでいくハードなストーリーにハマった人は多いはず。
また、当時多くの少年たちがこの漫画で初めて「外道」という言葉を知ったことでしょう。
その後現在のアラフィフに至るまで、実生活で「ド外道が!!」とか言ったり言われたりする機会はありませんでしたが……
そして、有名な漫画なのにあまり知られていないように思いますが、実写版があるんです。
そこに悪役で出演していたのが、この「さがす」の主演である佐藤二朗さんでした。
佐藤二朗さんの主演作が見たかった
2014年のことです。
ケーブルテレビのチャンネルを適当に変えていたところ、たまたま見つけた実写版「ブラックエンジェルズ」
漫画好きだった私としては、懐かしさもありそのまま視聴することに。
そして見終わった後の感想。
内容云々ではありませんでした。
あの悪役の俳優は誰?
主役を食うというよりは作品を食っていたと言ったほうがしっくりくるような。
そんな、強烈なインパクトを残していたのが佐藤二朗さんでした。
当時すでに活躍されていた俳優さんですが、私はこの前年までしばらく海外勤務だったため、流行に疎く、この作品で彼を初めて知ったんです。
底なしの悪意とでも言えばいいのか、この犯人は怖い、不気味、ヤバイ、圧倒的なインパクトでした。
一般的にはコミカルな役柄のイメージが強い俳優さんですが、私にとってはこの悪人役がとにかく強烈でした。
そんな佐藤二朗さんが主役、かつシリアスな役柄、これは見ないわけにはいきません。
錯綜する狂気が衝突して、混ざって、壊れて……
佐藤さん演じる原田智はちょっと疲れた感じの中年親父で、しっかり者の娘楓と二人暮らし。
親子の仲は良いけど、経済的には結構厳しい暮らしの様子。
そんな、どちらかといえばよく見る普通のおじさんが、殺人犯を目撃したことをきっかけに事件に巻き込まれる、最初はそんな話だと思っていました。
でも、ストーリーが進むにつれて思いました。
原田智の感情は既に壊れていたんだと。
働かないといけない、稼がないといけない、娘を養わないといけない、娘を守らないといけない、当たり前だと分かっている。
だけど、どうしても踏ん張りがきかない。そこに相反する気持ち、どうでもいい、流されていい、そんなあきらめや虚無感に負けてしまい、結果として惰性でやり過ごしてしまう。
そんな状態に陥った原因が妻の死で、ここで決定的に感情が壊れてしまった、そんな印象を受けました。
だけど、このままじゃいけない、変わらなければいけない、葛藤が続いていたんだと思います。
そんな中で偶然目撃し、接触したのが指名手配中の山内照巳。
自殺希望者を募って殺害することで、人助けと称しながら自分の欲求を満たす連続殺人犯です。
感情が壊れ、自らの狂気を曖昧に隠す原田智。
殺人を肯定し、狂気を前面に押し出す山内照巳。
2つの大きな狂気が触れ合って、お互いを警戒しながら、騙しあいながら、物語は進みます。
そして、自分を殺してと依頼する内藤あおいも加わり、大人たちの狂気は衝突して、混ざって、壊れていきます。
そんな大人たちと対照的に、父を思いながら懸命に父や山内を追う娘の楓。
4人それぞれが迎える結末は……
映画「さがす」おすすめです。